(by クヌギー) 待っているときは、本を読めません。自分が待っているものに関心が向いているので、集中できないのだと思います。たとえば、よく知り合っていない人との待ち合わせといった、ちょっとした緊張を伴う待ち時間とか、映画やお芝居がはじまるまでの時間とか。
それは当たり前のことなのですが、はっきり自覚したのは、今年に入ってからです。
1月に父がある手術を受け、そのときの麻酔から覚めないということがありました。
手術自体は予定よりも短い時間で成功したのですが、想定されていた時間になっても、父の意識は戻りませんでした。手術中の麻酔のチャート、術前術後の検査結果、どれからも目覚めない理由が見つからず、なにか身体に重大な病気があって意識がないのではなく、ただ目覚めないだけとみられました。それまでに同様の手術を数百件手がけてこられた主治医の先生にとっても、このように目覚めない例ははじめてとのことでたいへん困惑されている様子でした。
けっきょく父は術後5日目に意識が戻りましたが、それまでの間、母と妹、私の3人は、父が目を覚ますのをひたすら待っていたのです。