(by まつおっち)
ちょっと古い話ですが、民営化される前の国鉄についてのエピソードをご紹介します
(私の記憶に頼っていますので、細部は多少違っていることをあらかじめご了承お願いします)。
某大学教授が教え子たちに対して、
「国鉄の将来性はないから、あそこに就職するのは止めたほうがいい」
と話したところ、ある教え子の父親がこの教授のところを訪ねてきました。
この父親は国鉄に勤めており、教授の話に憤慨して来たのです。
「国鉄ほどいいところはありませんよ」
とその父親は断言し、その理由として次の点を挙げたそうです。
・一日3?4時間しか働かなくてもいい
・毎日仕事が終わった後、風呂に入れる
・たとえ損が出ても、国が補てんしてくれる
これを聞いた教授は、
「だからこそ将来性がないのですよ」
と返したら、父親は席を蹴って帰っていったそうです。
結局、国鉄は放漫経営がたたって大赤字を積み重ねてしまい、
民営化せざるを得なくなりました。
教授の言うことは正しかったわけです。
私は、この父親を非難するつもりはありません。
また、当時の国鉄に勤務されていた個々人に責任はないと思っています。
こうした組織運営を許した国や国鉄トップに重大な責任があります。
それにしても、文字通り「ぬるま湯」に毎日浸かっていた
当時の多くの国鉄職員にとって、国鉄は天国のような場所であったに違いありません。
正直なところ、経営が赤字になろうが「そんなの関係ねぇ!」と開き直れ、
パートさん並の短時間労働でボーナス込みの満額の給料に加えて、
手厚い福利厚生制度、退職金もしっかりもらえるなんて、本当にうらやましい(笑)。
でも、本当の意味で、国鉄が「天国」だったのかには疑問を持ちます。
「ぬるま湯」だからこそ外に出ると寒い、
だから「出たいけれど出られない」という状態の中、無気力感を持ったまま、
惰性で仕事を続けていた人も多かったんじゃないでしょうか?
この国鉄の話を聞いて、私はふと
『カッコーの巣の上で』
という名作映画を連想しました。
ジャック・ニコルソン演じる主役のマクマーフィは、
刑務所から逃れるため、精神疾患のフリをして精神病院に入院します。
そこで出会った患者たちは、本当に重い心の病に罹っている人もいましたが、
実はその気になれば日常生活に戻れるにもかかわらず、
病院での安逸な毎日に流され、看護婦長の厳しい統制に素直に従っている者もいました。
安定した生活のために、自らの「自由」を喜んで犠牲にしていたのです。
しかし、マクマーフィは、あまりに自由のない病院内のルールに我慢ができず、
あの手この手でルールを破り、挙句の果て、病院全体を巻き込んでの乱痴気騒ぎを起こします。
このため、マクマーフィは、最後にはロボトミーという手術を受けさせられてしまいます。
ロボトミーは、人の知性を司る脳の前頭葉の部分を切り離す脳外科手術でした。
(今は行われていません)