(by paco)510脱原発革命を夢想する

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(by paco)知恵市場有料版、コミトンから、見本記事(2011/05/09付)をお届け。

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昨日、菅総理が、中部電力の浜岡原発を停止する要請を出した。

脱原発派は一気に盛り上がり、ネット上は歓迎のメッセージが流れている。それに比例して、不安や疑問のメッセージも多いが、誰のツイートを、誰のサイトを見ているかによって、印象はまったく違うだろうから、優劣を考えても仕方がない。

今日は僕の印象を話したい。現時点では、根拠はあまり説明できないので、あくまで印象ということで、今日の時点での話だと理解してほしい。

昨日の時点では、菅総理が浜岡原発を止める要請そのものは評価したものの、これが大きなきっかけになるのか、判断が付きかねていた。

何しろ、総理大臣が特定の原発の停止を支持すること自体が異例中の異例だし、総理にその権限があるのか、あるとしたらどのような法令に則ってのことなのか、という原理的な話も不明だった。

海江田経産大臣とは話を付けたらしいが、それ以外の閣僚や産業界との話が付いているとは思えなかったし、浜岡を止めた結果、中部電力の電力量が足りるのかどうかを検討したのかも、不明だった。

何しろ、菅内閣は崖っぷちで、もともと何をやっているのかわからない「仕事しない内閣」だったし、震災後の対応を非難されて、菅おろしの怒号の真っ最中。そんな中での「浜岡停止」を、人気取りとする見方もあったし、伸子夫人と相談して、「いいんじゃない?」といわれたから発表したという、家庭内決定の噂さえ流れて、効果は無いだろうとも思われたわけだ。

が、ひと晩過ぎて、今日(5/7,2011)になり、これは予想以上に大きなことかもしれないと考えを改めた。

菅総理が何か、明確な強い意志とねらいと戦略をもって発表したのではないことは、たぶん間違いない。菅総理のキャラクタが変ったわけではないだろう。どちらかというと、あまり考えないで発表したからこそ、いろいろなものごとが一気に動き出し、流れが生まれ、押しとどめようもない大潮流になるのではないか、と考えている。

その潮流とは、脱原発、自然エネルギー、地域主権へ、日本の国の形が変わる大きな引き金を、菅総理はその意図とはまったく別に、引いてしまったのではないか、ということだ。

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以下、ランダムに、何が起きつつあるかを考えてみる。

■原発をチェックし始めると、再稼働できなくなる

浜岡原発を止める理由は、予想される東海地震による大津波に堪えるよう、15メートルの防波堤をつくる工事が完了するまで停止、ということになっている。しかし、当然だが、この停止の間に、さまざまなストレス・テストが行われることになる。

津波以外に、そもそもの耐震強度があるのか。

実はこれが、非常にあやしく、現状の耐震強度は、2009年8月におきた「駿河湾地震」マグニチュード6.5のゆれでさえ、原発の設計強度を超えてしまったのだ。これは、最新の5号機だ。

浜岡原発は、最も起こる確率が高いとされている東海地震の震源域の真上にある。
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09_yosokuchizu/fig_hq/tme-total-y30-s60-sui-p0.png

その事実は、浜岡原発がつくられた1971年から分かっていた。耐震基準通りにつくろうと設計したところ、予算がまったく合わなくなったために、基準の解釈を変えてぎりぎりクリアしてつくられたと、元設計者は証言している。
http://www.mynewsjapan.com/reports/249
上記サイトにはこの元設計者が誰か、書かれていないが、内容から考えて、原子力資料情報室のUstream中継で説明していた後藤さんではないかと想像している。この証言は、すでに廃炉が決まっている2号機について。しかし、5号機の上記の設計許容突破の状況から考えて、稼働中(今回停止される)の4号機5号機の耐震設計も十分ではないだろう。

そもそも想定される地震と津波自体が、今回の東日本大震災で、これまでの想定を大きく変えなければならないことが分かったし、さらに、最近の地震学の成果から、東海地震は単体で起こるとは限らず、太平洋岸の1000kmのプレートが一気に動く「東海・東南海・南海連動型」になる可能性が高いということ分かってきた。

この3地震連動型は、紀伊半島の潮岬沖のプレートが跳ね上がり、それをきっかけに東に順にプレートが数メートルずれ上がり、潮岬から駿河湾までを震源とする東南海、東海地震が起こるというもの。さらに同時に、潮岬から西に、四国沖から大分県にかけての海底で順にプレートが跳ね上がり、南海地震が起こる。震源は、スマトラ沖地震と同じ、1000kmにおよび、マグニチュード9クラス、大津波がくり返し海岸を襲うというものだ。この地震の揺れは、長周期で在ることが特徴で、船酔いのような大きな揺れが最大20分にもわたって揺れ続けるという(2010年3月10日放映のNHKスペシャル)。

この、新たな地震学の知見をもとにすれば、浜岡原発の耐震強度が十分という判断になるはずがなく、定期点検ではなく、地震対策で停止させた原発の再起動は、無理という判断になるだろう。

これまでなら、書類審査の手続きがきちんと取られていれば、安全性は確保されたと見なすというのが、浜岡原発差し止め訴訟などの判断だが、今回の停止では、研究者や市民が黙っているはずがない。地震学者は福島原発の事故を予見しておきながら、原発の停止についてはあまり言わなかったことについて深い反省の念を抱いている人が多くいて、浜岡のストレス・チェックに際しては、はっきりとものをいってくるだろう。すでに、福島原発事故以前の状況は大きく変わっている。いったん停止した原発を、再稼働することは出ずに、巨大な堤防工事は無駄になるだろうが、それでも、廃炉になった後の、放射能がたっぷりつまった原発を守るという機能はあってもよいと思う。

結局、堤防工事が終わる予定の2年後以降も、浜岡原発の再稼働はできないと予想している。

■脱原発は雪崩を打って進む

この際稼働は無理、という判断が続々出てくるにつれて、各地の原発についても、ストレステストを行うよう、強い要望が出されるようになるだろう。それも、原発をもつ地域の自治体からではなく、周辺自治体からだ。

浜岡原発の地元、御前崎市の市長は、今回の総理の原発停止要請に戸惑いのコメントを出したが、その理由は原発立地で潤沢な交付金貸しに出されており、原発と同時に交付金が止まれば、市の財政が行き詰まることは目に見えているからだ。地元市民も財政破綻が怖いので、何もいわないだろう(従来からの反原発派は除いて)。

しかし周辺の市町村、県は、明確に反対を表明するようになる。事故が起きれば、原発がある自治体だけでなく、そのとなり、その隣と、少なくとも30キロは直接的な被害が出ることが、福島原発の事故で分かった。地元自治体がためらっても、隣接自治体はためらいなく原発停止を訴えるだろう。1市が原発を支持しても、周辺の数市町村が止めるよう要請すれば、地元自治体の原発支持が奇異な行動に見えてくる。原発自治体に対する周辺からの白眼視が広がり、地元も停止を言わざるを得なくなると予想する。

これまでは国と地元がいいと言っているのだから、それ以上波風を立てるのはやめようという「事なかれ主義」「横並び」だった日本人が、波風を立てるほうが標準状態と言うことに風向きが変わるということだ。

その結果、僕のような脱原発派の想定を越えて、各地で原発が同時多発的に停止され、再稼働できなくなる。電力不足は深刻化するだろう。しかし電力不足によって経済が停滞すると主張する財界人に対して、「人の命を犠牲にして金儲けをする守銭奴」という汚名が着せられるようになるだろう。実際、2000年以降の経済発展の中でも、企業経営が上向いても、市民の生活はまったく豊かにならなかった。企業の存在意義に対する異議申し立てが進み、完全に風向きが変わりはじめる。

■原発なしでもやっていける生活になる

これと並行して、電力不足への対策が広がる。

最も大きいのはピークシフトで、工場の稼働時間が夕方から翌日午前までになり、昼間は稼働しなくなる。このようなシフト稼働に早く対応できた企業が業績を一気に伸ばして、対応が遅れた企業は場合によっては淘汰される。

一般市民の生活も、特に夏は昼間休みを取るシエスタの習慣が広がるだろう。

リアルタイムの電力計測メーターやそれを自宅PCで記録する機器が短期間で開発され、目先の利くELECOMのようなメーカーが中国でつくらせたテーブルタップが、量販店とネットで飛ぶように売れ始める。テーブルタップからIPv6で送られ、記録された消費電力を人々は見ながら、どんな電気を節約するかを考えはじめ、自律的にピークを抑えることを学び始める。

一方、蓄電設備の開発が一気に進み、夜ためて、昼使うインフラが各家庭、事業所に普及して、次第に混乱は収まる。結果的にエネルギー利用の自立が進み、電力会社が需要に合わせてきめ細かく発電量を調整する必要もなくなってくる。

この動きの中で、安い深夜電力に契約が集まり、一方電力会社の深夜電力は原発稼働が前提の投げ売りなので、電力会社の収益は一気に悪化する。大手金融機関は貸しこんだ資金が焦げ付くことを恐れるが今さら資金を引きあげるわけにはいかず、電力会社と運命をともにするところも現れる。市民は預金を、地域の信用金庫や地銀に移して自己防衛し、地銀や信金は地域エネルギーに積極的に買い出して、栄えていく。

いずれにせよ、脱原発の動きは、今の脱原発派の主張を越えて、急速に進むことになるだろう。

向こう3年程度でこういった動きが定着いてくると予想している。

■被災地を中心に、政府を頼らない自立コミュニティが生まれるだろう

東北の津波被災地では、政府からの支援が十分でないことに業(ごう)を煮やし、自律的なコミュニティを形成して、自治グループが生み出されていく。

全国から、上総堀などの井戸掘り職人たちが続々被災地に入って井戸を掘り始める。水が確保されたあとに、合併槽浄化槽が次々に設置され、水をめぐる循環が回復する。

この水の循環をどこに設置するかで、地域の住民が議論をして、井戸掘り職人、外部からきた街づくりNPOなどが参画して、高台に新しい街が形成されるか、逆に、従来の街にコンパクトな市街地をつくり、津波に堪える高層ビルを数百メートルおきにつくって、周辺住民を収容するなど、街ごとに新しいコンセプトが生まれ、政府のお仕着せの仮設住宅にいったん入った人々も、数か月で地域に戻る人が増えるだろう。

仮設住宅特需を当て込んだ建設業者の思惑は道半ばで終わり、地域住民と新しい街づくりの自治にリーダシップを取った設計者がリーダーの1人になる。

中央政府とはほどより距離を取り、支援をあてにしない体質が生まれる。

■脱原発、地域でのエネルギー自立をめざす自治体が増える

被災地の動きと並行して、被災していない自治体、特に県単位で、脱原発、エネルギー自立をめざすところが続出する。

すでに、長野県の阿部知事が自然エネルギー100%をめざすことを宣言しているが、自然エネルギー産業を興すために、積極的に動き始める。

実は、最も重要なことは、国によるムダな規制にある。

田畑に太陽光パネルを設置してはいけないという農水省の規制を、知事が農水省に直談判して、特例を認めさせることから、事態が動く。知事は「設置してもよい」と正式に見解を出させることはせず、「仮設的なものを設置して、原発が稼働していない間の電力不足に対応できるようにしてほしい」と臨時特例をもとめ、農水省は「地域の農業委員会が認めるなら」と見て見ぬふりを決め込む。

これを受けて農家が電力供給組合を作り、休耕地や狭小棚田にパネルや小型風車を架設的に設置していく。電力は、周辺の住宅で使われる。

本来は土地境界線をまたいで電力を供給することは電気事業法違反だが、電力不足を理由に勝手に送電線がつくられ、短期間に農村部で自律的な電力網がつくられていく。電気事業法はなし崩し的に無効になり、慌てた国会は最大供給量を10万キロワット程度に限定して、小規模自由化を認める法律を作り、ついに電力の地域独占は実質的に終わる。

その後、電力会社と小規模電力組合との間で話し合いがもたれ、電力会社のインフラはなし崩し的に小分けにされていき、電力会社は幹線網の管理のみに限定されていく。今のJRがローカル線を切り離しているのと同じ流れが、電力で生まれる。

大都市では、電力インフラの脆弱性に嫌気がさした若者たちがぞくぞくと地方に移り、新しい仕事に就いていく。

 ★ ★ ★

以上、pacoの妄想である。

過去の歴史を見ると、革命が起こるとき、革命のうなりは、革命が始まる以前に革命を夢想していたものたちの予想を超えて進展していく。僕がもし、革命を夢想していたものであり、実際に革命が起こるなら、僕の予想を超えて(あるいは飯田哲也さんの予想を超えて)、早く、大きな変化が起こるだろう。

そして、その大きな変化をつくったきっかけは、その変化を予想していないことによっておこることが多い。

菅内閣は、仕事しない内閣である。中央政府が仕事をしない方が、上記のようなアナーキーな変化が起こりやすい。倒閣や解散風も吹くだろうが、実は解散はできない。被災自治体で住民台帳が消失したり、行方不明者の死者特定ができずに、有権者を把握できないためで、選挙ができないのだ。衆議院に300議席をもっている民主党も、そう簡単に解散はできないだろう。任期満了まで、中央政府の機能は止まる可能性が高い。その間、混乱の中で地域の自立と脱原発が必然的に進む。

これまで僕が想定してきた変化を、さらに想定を越えて大きくおこるとしたら、上記のような動きになるだろう。それは、5年程度の時間のスパンで一気に起こる可能性がある。

起こってほしいような。
起こってほしくないような。

あなたはどう考えるだろうか。

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