(by paco)見本版 504原発事故の影響は100年、日本人を苦しめる

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(by paco)有料版[知恵市場 Commiton]の見本版です。


先週は旧稿で失礼しました。今週は書き下ろしです。

大震災以後、ひたすら原発の状況のウォッチに時間を使ってきましたが、状況は非常によくないままです。

事故当時と比べると、爆発的な大事故に発展するリスクはかなり下がりました。原発の状況の詳しい分析によれば、チェルノブイリのような、フル稼働中の原子炉を上空に拭き上げてしまったような事態は、現状では起きにくいというのが、最悪のシナリオをになってきました。

しかし、だからといって、今回の事故が「チェルノブイリほどではない」といえるのかどうかというと、そうではありません。詳しい比較は、わかりにくくなるのでやめておきますが、「事故の大きさ」は小さくても、影響の範囲はチェルノブイリ以上になる可能性が大きい、ということです。

チェルノブイリでは、事故を起こしたのは1基だけでした。その1基の事故は現在のfukushimaより大きいのですが、fukushimaでは4基の原発が危機的な状況です。1基ずつの希望はチェルよりも小さくても(それでも大事故です)、4基が隣接していることが大きな問題です。1基でもさらに大規模な事故に発展し、現地での作業ができなくなれば、他の原発でも作業ができなくなって、かろうじて保たれてる小康状態が維持できなくなり、4基ともに大崩壊を起こす可能性があります。


特に3号機は、MOX燃料を使っているため、史上最強の毒物と言われるプルトニウムが大量に燃料棒に入っており、これが炉から漏れて流出する可能性があります。このようなプルトニウムの大量流出は、原子力開発史上まったくなかった事態であるため、その影響は想像を超えて甚大になるでしょう。

また、使用済み核燃料が、それぞれの原発内に、原発の使用年数分入っており(使用済み燃料は基本的に運び出されていない)、燃料棒は数千本あります。原発がコントロールできなくなれば、この使用済み核燃料も冷却できなくなり、被服が劣化して中にあるウランなどの放射性の燃えかすが大量に放出されることになるでしょう。

このように、fukushimaの4基に入っている放射性物質の総量は、「広島型原子爆弾の500倍」と言われたチェルの総量より、さらに十倍以上になると思われます。よく「広島で原爆にあっても生き残った人がいるし」と乱暴なことをいう人がいますが、今回の事故で放出される可能性のある放射性物質は、広島の比ではないのです。


4つの原発そのものが今後大規模な爆発を起こして、一気に核物質が大気中にまき散らかされる、というリスクは当面下がっています。しかし、小規模な爆発をくり返してじょじょに、しかも数年に渡って、核物質を放射し続けるでしょう。核燃料や炉心から流出する物質は、中の冷却水とともに流れ出て、今回作業員が足を被爆したように、原子炉内にたまり、さらにそれは海へを流出していきます。

大きくいって、小規模爆発と大気へのやむを得ない放出(ベンド)によって、比較的軽い、セシウムやヨウ素、ストロンチウムなどの核物質が、風に乗ってまき散らかされます。原発の東半分は海ですが、風向きによって西側、陸側に大量に飛散するでしょう。

その日距離は、現在でも新潟県や山梨県、さらに微量ですが九州までおよんでいるので、日本全国、放射性物質に汚染されます。現実的な脅威になるのは、関東以北となるでしょうが本州の半分は汚染に悩まされることになります。中でも北関東(群馬、栃木、茨城)、東北地方南部(福島、山形、宮城)の農地は壊滅的な打撃を受けるでしょう。この地域の農業は今まさに春の作付けが始まるところです。放射性物質があっても、見た目はまったく代わらないので、農家は作付けをするかもしれませんが、出荷できるのはどれくらいか、おそらく大半が現実的には食べられないものになるでしょう。政府は「直ちに問題はないレベル」というでしょうが。彼らはそれしかいいません。

4月下旬には田植えが始まりますが、米も食べられないでしょう。米は水の循環で作ります。その土地に放射性物質が降っていなくても、上流から流れてくれば、作物は汚染されます。今回東京の水道水も汚染されましたが、これも東京の水瓶である群馬や埼玉が汚染され、それが川に流れ込んだためです。

今後、東日本では、放射性物質に汚染された水や野菜、米が常時、頻繁に現れ、全数検査が必要になります。せっかくつくったものが食べられずに廃棄される例が増えるでしょう。東海より西の農産物は比較的影響が少なく、農業は活況を呈すると思いますが、同時に、韓国や中国、台湾などが日本向けの作物を作り、大量に輸出してくるでしょう。中国産を不安がるマインドはあっという間になくなります。

風評被害といわれますが、放射性物質の汚染は風評ではありません。日本中どこででも起こる可能性があり、消費者は自己防衛するしかない。全数を検査して安全を確かめるようにしないと、変えなくなります(すでに僕の家では、関東以北の本州でとれた野菜は買っていないし、買ってしまったものは捨てています)。

次に、海の被害です。福島の海で基準の1000倍を超える濃度が確認されましたが、今後はこれが桁違いに増えていきます。上空に放出された軽い放射性物質が風に乗って海に落ちるのに加えて、原発をひやしている水が、底の抜けた原発からこぼれて海に流れ出し、しかもここには重い元素が含まれるので、ウランやプルトニウムによって海の汚染が広がるでしょう。その範囲は、千葉から北海道の知床当たりまでは確実に広がると思われます。さらに太平洋を広がって、ハワイ、北米、南米でも汚染が確認されるでしょうが、このあたりでは実害があるレベルではないと思います。

この結果、まず、関東から北海道の太平洋岸の漁場がほぼ失われ、沿岸漁業は崩壊するでしょう。魚は回遊するので、九州で捕れた魚、日本海で捕れた魚も、全数検査しなければ、食べられなくなります。すでに汚染は始まっていますから、たとえば今、寿司を食べるのはかなりリスキーな行為です。まったく検査されていないので、猛烈な核物質が含まれている可能性があります。冬は近海の魚がおいしい時期ですが、残念ながら生ものは食べられません(九州産など、出所がはっきりしているものは今のところ大丈夫でしょう)。もちろん、遠洋や、海外から輸入したもの、事故以前にとって冷凍されていたものは問題ありません。

さらに、この状況は世界中に影響を与えます。カドミウムや鉛などの重金属の汚染は、使用のピークを過ぎて数十年してから、今度はクジラやアザラシなどの脂肪層に高濃度で蓄積されていることが分かりました。食物連鎖の上位にある彼らには、脂肪層に濃縮される形で食物連鎖を上っていくのです。重金属は脂肪層に主に溶け、体外に排出されにくいのです。御用学者は「直ちには問題がない、体外に排出される」といっていますが、ウソです。重金属系は蓄積され、食物連鎖の上位にある人間に最も高濃度になり、イヌイット(エスキモー)の女性の母乳から、高濃度の鉛やカドミウムが検出されるのはそのためです。彼女らは、母乳のメリットのために乳児にカドミウムを飲ませるか、カドミウムを避けるために粉ミルクを使うかという究極の選択を迫られていますが、日本女性も同じことが起こるでしょう。乳児は細胞分裂を盛んにして身体を作っています。細胞分裂はDNAの複製ですが、放射線はこの複製を傷つけ、まちがったDNAを創り出します。胎児、乳児、子供ほど、放射線の影響を強く受ける。子供たちの病気が増えていくでしょう。親としては、子供が重病になることほどつらいことはありません。同時に親のがんも増えるでしょう。特に脂肪が多い部位、乳がんや、骨のがんが増えると予想されます。

とはいえ、このような事態が起きるのは、摂取後、蓄積されたあとなので、10?30年以上の時間がかかります。そうなると、すでにいつ摂取したものが健康被害につながったのか分からなくなり、「原発事故とは直接の関係がない」と政府や東電はいうでしょう。しかし病気に苦しむのは私は私の子供たちです。

放射線の影響を、日本人は軽視しすぎる、と友人の放射線技師がいっていました。気軽にレントゲン検査やCT受けるのは日本人の特性、と。原爆被爆の経験があるのに、逆にそれが「原爆のような強いものではないから大丈夫」というマインド生んでいます。さらに、医療現場で検査を多用することも原因です。これは、診察には安いお金が、検査には高いお金が這われるために、医者が検査を多用することになる、という経済上の理由であって、治療に検査が必須だからではありません。これも医療の報酬を決める厚労省の恣意的な決めごとによって、日本人の被爆が増えているという構造が見て取れます。

以上、駆け足で原発の今後の影響を考えてきました。この影響は、少なくとも100年は続きます。放出左列核物質の中心は、ヨウ素とセシウムになりますが、セシウムの半減期は30年です。30年後に半分、60年後に4分の1、90年後に8分の1となり、そのぐらいの年数がたてば、影響はだいぶ小さくなると思われますが、今後量も増えるでしょうから、実際は分かりません。いずれにせよ、今生きている僕たちはみな死んだあとの世代に、禍根を残すのは間違いなく、日本史上に残る最悪の歴史です。

大事なことは、この最悪の歴史のあと、です。ひどい目にあったけど、賢明な方向に舵を切ったと歴史に残したいと思いませんか? だったら行動を取ることです。【iwato】でいっしょに考えましょう。できることはありますが、うまく行く確率は現在のところ、低い。でもあきらめずにやっていきたいと思っています。あと1か月が大事なタイミングです。

【iwato】はこちら

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