(by paco)「一芸採用」のデジャヴ

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(by paco)先週の記事。「志望動機は不問。おとなしい学生は採りません――。富士通は2012年春入社の新卒者採用で、スポーツや社会貢献、勉強、起業などで実績をあげた学生を約30人採用する。」だって。詳細は文末参照。

これを見て、デジャヴを感じる人は、それなりの年齢かもしれない。バブル前後、一芸枠というのがあったのだ。新しい発想のできる人を採用するために、従来のような試験を課さず、一芸に秀でた人を採用する……。そう、実際に行われていたのですよ。日本の大手企業で。一芸枠で入った人って、その後、どうなったんだろう? 活躍している人もいると思う。でも、一芸枠で採用した人が、新しい創造的な仕事をした、という取材記事は読んだことがない。

たぶん、富士通も一芸枠を用意していたと思うんだけど、その後どうなったのか、確認した上での今回の話なんだろうか。

それとは別に、気になるのは、この記事にはなぜ過去の一芸枠がどのような結果になったか、取材していないのだろう? おそらく、書いた記者は若い記者で、過去、同じような行動を企業がとっていたことは知らないかもしれない。でもこの記事を通したデスクは、知っている年齢のはずだ。「過去もやっていたんだよ、どうなっているか、取材してこい!」と言わないのだろうか? このあたりも、メディアのクォリティダウンを感じさせるところだ。昔の話しといっても、まだ20年にもならない。

スポーツや文化活動で優れた活動をした人を企業が迎えること自体は、もちろん歓迎したい。でもそれを、ことさら採用枠というような話になるところが、「なんか違う」。枠を決めるのではなく、必要な人材スペックとそれに対応する採用予定数を決めればよく、たとえば創造性の必要な仕事が30人分ある、というのは、良い。でも30人分を、一芸に秀でた人で埋める必要はない。一芸に秀でていなくても、創造的な仕事ができる人はいるし、だいたい、スポーツでよい成績を上げたことと、創造性は、ほとんどリンクしない。

一般論でいえばスポーツは決まったルールの下で、決まったスペックの能力を競うものだ。創造性とは、むしろルールを決めることであり、スポーツのように決まったルールのしたでの活動とは必ずしも両立しない。もちろん、スポーツ選手も創造的な人はいるが、そうでない人との割合は、むしろ低いかもしれない。特に日本のスポーツ指導体制の元では。

記事では、目的は創造性ではなく、チャレンジ精神だという。では、富士通の一般的な採用では、チャレンジ精神はあまりいらない、ということなのだろうか?? 創造性は必ずしも不要かもしれないが、チャレンジ精神は、全員に必要なんじゃないだろうか。

これは、要するに因果関係の取り違えとか、隠れた前提の間違いとか、そういう問題。そして、かつての「一芸採用」も同じ課題が指摘されていた。結果がどうなったか、検証して、またやることにしたのだろうか。

もちろん、それなら良いが、だとしたら、記事はもうちょっと突っ込んだ内容になったのではないかと想像する。

もし、僕の指摘が間違っていないなら、日本企業、しっかりしろよ。担当者もロジカルシンキングきっと学んでいるんだろうが、どうして応用できないんだろう。ホント、悲しくなりそう。

僕が悲しくなるようなことじゃないだけど。

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おとなしい学生は採らない! 富士通、一芸採用枠3倍に
2011年1月31日5時16分

 志望動機は不問。おとなしい学生は採りません――。富士通は2012年春入社の新卒者採用で、スポーツや社会貢献、勉強、起業などで実績をあげた学生を約30人採用する。幅広い人材を確保するために一芸に秀でた学生を特別枠で迎え入れる。

 富士通は「一芸採用」を昨年始め、応募した約380人のうち12人が内定した。シンクロナイズド・スイミング日本代表キャプテンや、大学を休学してJリーグクラブの観客動員増に貢献した学生、学生囲碁2冠、複数のビジネスコンテストで入賞した外国人らが今春入社する。これまでの選考方式では富士通を志望しなかった学生層を獲得できたため、採用数を3倍に拡大。2月から募集する。

 面接では、あえて志望動機を問わず、学生時代に打ち込んだことや、物事に挑戦する気概を聞き出す。豊田建・人材採用センター長は「会社のビジネスが変化しているので、周囲を巻き込んで物事を動かせるチャレンジ精神の持ち主が欲しい」。

 こうした採用はソフトバンクも昨年始めた。「組織になじめなくてもいいから、挑戦する若者が欲しい」(広報)ためだ。「自分がナンバーワンだと思うこと」をアピールしてもらう。すでに事前登録を締め切った12年春の新卒者採用では800人が応募。採用数は未定という。(橋田正城)
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