(by JIN)国家権力維持制度としての「死刑制度」

| コメント(0) | トラックバック(0)

(by JIN)
先般、死刑執行の刑場が初めてマスコミに報道されると共に、法務省で「死刑の在り方についての勉強会」が開催され(http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji02_00004.html)、死刑制度がにわかにクローズアップされています。死刑の存廃の議論には多くの視点がありますが、今回は、「国家権力維持装置」としての側面から死刑制度を見つめてみます。

■死刑制度は被害者・遺族の感情慰撫のための制度ではない

死刑制度賛成の根拠の1つとして挙げられるのが、死刑制度は、被害者・遺族の感情を慰撫するための制度であるものである、というものです。

元々、刑罰は、国民個人が復讐するのを自由に放任していたら社会秩序が崩壊してしまうことから、復讐を国家が代わって行うところから生じてきた面があります。法治国家においては、被害者・遺族が犯罪者に対して復讐すればそれが犯罪となってしまうので、結局、被害者・遺族は「やられっぱなし」になってしまいます。そこで、復讐を被害者・遺族に肩代わりして国家が行うのが刑罰の発動であり、彼らの感情を慰撫するために、人を殺した犯罪者には死を以って報復するのが死刑、という理屈です。

しかし、先日、NHKのクローズアップ現代を観ていて、遺族が犯罪者を生かして欲しいと嘆願していたにも関わらず死刑が執行されてしまっていたケースがあったのを知りました。その遺族は、肉親を殺した犯罪者を決して許すことはできませんでした。しかし、その怒りをぶつける相手は犯罪者しかおらず、彼と面会・文通して感情をぶつけることで、やりばのない怒りを解消してきたと言います。そこで、国家に対して、死刑を執行しないで欲しい旨嘆願書を提出したのですが、受け入れられないまま、何の連絡もなしに、死刑は執行されました。

この事例から、死刑制度は、被害者・遺族の感情慰撫のために存在しているものではないことが分かります。

■死刑制度存廃の議論と死刑制度への国民の支持率は別問題である

日本での死刑制度賛成の根拠として、もう1つたまに挙げられるのが、日本の世論では約80%が死刑制度に賛成している、というものです。先日のNHKクローズアップ現代でも、死刑制度賛成の論者として紹介された専門家が、このことを死刑制度存続の理由として挙げていました。

しかし、個人の尊厳を最高の価値とする憲法をいただく我が国においては、いかに国民の99%が望もうとも、個人の人権・権利を優先される、というのが大原則です。たとえば、国会議員が全員賛成した法律で個人を死刑に処す決定を下そうと、国民投票で個人を死刑に処す決定を下そうと、個人の人権を擁護する砦である裁判所が「ノー」と言えば、個人に死刑を科すことはできません。なぜなら、国の最高法規である憲法は法律より上位にある法規範であり、憲法を擁護する立場にある裁判所の判断は、国会や国民の決定に優先するからです。それが「個人の尊厳」の究極的な意味です。

この道理は、憲法を学習すれば、普通に学ぶことです。よく単純に世論を理由に死刑を擁護する議論が聞かれますが、先日のクローズアップ現代では、「専門家」がこれを理由にしているのを目の当たりにして驚いてしまいました。・・・もっとも、テレビでは専門家の発言の一部分だけを取り出しているので、全体として聞けば違うニュアンスのことを言っていたのかも知れませんが・・・

■死刑は国家権力維持装置である

以上、死刑制度は、被害者・遺族のための制度でもなく、これを世論でこれを擁護する国民のためでもないことを論じてきました。

そこで、死刑制度は誰のために存在しているのかを考えていくと、結局は「国家のため」という所に行き着きます。国家の法秩序に逆らった者に対しては、究極的には生命を奪うという選択肢を示すことによって、国民の国家への忠誠心を強めようとしているのです。

「国家」とは、具体的には、国民から税金で生活している官僚のことです。

日本の死刑制度は、その執行の可否・時期について、まったく時の法務大臣の裁量に委ねられています。この「裁量」という所がミソで、人の命を奪う刑罰執行時期の判断に幅を持たせることで、国家意思を死刑制度に反映されることを可能としています。この場合の国家意思は、直接的には法務大臣ですが、死刑制度に対して特段のポリシーのない法務大臣の場合は、大臣に意見具申する法務官僚となります。

こうした権力維持装置として死刑制度が存在しているといった側面について、今回のNHKクローズアップ現代は気付かせてくれました。

(by JIN)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://w0.chieichiba.net/mt/mt-tb.cgi/968

コメントする