(by paco)吉田拓郎の初期作品を40年後に聴く

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(by paco)僕の音楽の原点は、ベートーベンと吉田拓郎です。ahaha---ヘンですね。

小学校のころからピアノを習っていたので(まったくものにならなくてトラウマだけ残りました)、クラシックは好きで聴きました。ベートーベンか、モーツァルトか、バッハか、という三択は、クラシック愛好家の最初で最後の問いではないかと思うのですが、僕は断然ベートーベン派で、交響曲は全曲のスコア(指揮者が使う総譜)を持ってました。

ベートーベンの代表曲を7割方聴き終えたころに、姉の影響で出会ったのが吉田拓郎で、1970?73年ぐらいの絶頂期をリアルタイムで聴くことができました。小学校5年からの数年間なので、同世代の中ではかなり早くフォークソングにアクセスしていたのですね、5年上の姉と同じ時間を進んでいたので。

で、かなり聞き込んだ初期のたくろう作品を、最近大人買いでCDを買って聞き直してみたのですが、改めて聞くとたくろうってギターがうまかったんだなあということ。当時の録音技術としてはかなり驚異的にハイファイ感が出ていて、「語るようなへんな歌い方のフォークソング」としてデビューした吉田拓郎も、実は音楽を支えるギターの音は非常にクリアでいい音していたことに驚愕しました。

歌詞と曲を聞き込んでみると、本当に時代性を感じさせるのですが、70年代の危うい、ひりひりするナイーブなところがよく出ていて、なるほどこういう時代だったんだなと感じます。

初期の傑作のひとつ「元気です」に収録されている「親切」という曲を聴くと、今の感覚では何をいっている歌詞なのかまったくわからないという感じで、友だちと他人の協会にいる知人を歌ったことの歌は、たくろうが相手を気に入っているのか、嫌がっているのか、行きつ戻りつする歌詞で、今の感覚ではいらっちさせられるないようです。「友だちでいるのはやめたい、それを君のほうから言ってくれると気が楽だね」と歌うのですが、なんで自分から歌わないのか、そもそも、「君はもともと自分の僕の友だちじゃなかったんだよ」と歌えばいいのにね。ちなみにこの「君」は、おんなみたいな印象の歌なのですが、よく聞いているとはっきり、男です。

たぶん、思いを直接口に出さない遠慮やはばかりのマインドが根強く残っていて、相手に「僕の気持ちを察してよ」とメッセージを出し、出された方が晴れを感じて「じゃあさよなら」といってあげるのは社会の作法だったのでしょう。こういうマインドは、現実社会ではまったく失われました。

「こっちを向いてくれ」という歌では、「君と結婚しないのは、愛していないということじゃない」としつこく歌い続けるのですが、これも今の感覚ではいらっちさせられます。「一緒に住むということがとても気軽なのか、苦痛なのか、それはそうならなきゃわからないにしても」とまどろっこしい。でも、当時は結婚前に同棲すること自体がタブーだったし、同棲すること自体に、心理的なハードルがあった。まして結婚は、相手の一生を引き受ける大きな覚悟が必要で、離婚は決してしてはいけないもの、という感覚もありました。結婚についてのハードルが社会的に高く、それが「好きだけど今は結婚できない、それが愛していないことではない」というようなまどろっこしいやりとりの歌になっているわけですが、こういうやりとりは、実際この時代では感覚的によくあることだったのでした。

そのくせ、たくろう自身も、たくろうの同世代の団塊世代の多くも、非常に手軽に離婚する世代になったわけで、結婚、離婚を手軽にした世代が、その手軽さを実現していいのか、葛藤していたのが70年代なのでした。

今の20代は、好きになれば、半同棲、同棲に抵抗がないし、親も相手の身元がわかっているなら、相手のところに住んでいたとしても、結婚とは別だと思っているわけだし、逆に結婚自体、お互いに仕事を持つことで、「相手の一生を支え、支えられる」という感覚からはまったく変わってしまい、ハードルは大幅に下がっているのでした。大学時代にできたカップルは、就職して1年目に結婚することが普通みたいだし、そのタイミングを逃すと、逆に30過ぎるまで結婚しにくくなったりすると言う今の時代とのズレも感じます。

で、こういう70年代の曲世界を見てみると、いわゆる昭和ブームの嘘くささが見えてくるわけで、昭和30-40年代の危うさとナイーブさは、ちょっと気持ちが悪いぐらいです。これは、去年見て、知恵市場にも記事を書いた「20世紀少年」と同じことを感じさせるわけですね。

昭和がブームだけに、昭和から逆に今を投影してみると、2010年代という、約半世紀後の今の姿がよけいに浮き彫りにできるのではないかなと思いつつ、けっこう楽しんで吉田拓郎を聴いています。

※今回聴いたアルバム
元気です。
よしだたくろう・オン・ステージ!!ともだち
LIVE '73

ちなみに、たくろうの初ライブアルバムのサブタイトルが「ともだち」であることと、20世紀少年の悪役が「ともだち」なのは、たぶん、意図的なつながりがあるのでしょうね。

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