(by paco)【pacoの目×ecoの芽】018 エコエグ講座「エコツアー」

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(by paco)ちょっと前になっちゃいましたが、12月17日に今年最後のAIRミーティング・エコエグゼクティブ講座を行いました。テーマは「エコツアー」です。

ゲストスピーカーにエコツアーを企画・運営している「(株)日本エコプランニングサービス」から、柏木瑞絵さんを迎えて、柏木さんからのプレゼンテーションで始めました。

参加メンバーは年末ということで少なめの5名ほどでしたが、みっちり内容のある議論ができました。

まず、柏木さんから、柏木さんが考えるエコツアーの定義と、実際のエコツアーの事例を紹介してもらいました。エコツアーの定義としては、いま日本国内、ワールドワイドを含めて複数の定義が提唱されているものの、ひとつに絞れるものではありません。一例として、国際エコツーリズム協会(The International Ecotourism Society)の定義をあげてみましょう。

「自然保護と人々の生活の向上に貢献する、責任のある自然観光」エコツーリズムの原則

  1. 自然環境や地元の文化・生活に対する影響を最小限に抑える。
  2. 環境と文化に関する理解を深め、地元の生活を尊重する。
  3. 環境保全のために、直接経済的な利益をもたらす。
  4. 地元の人々に、経済的な利益と権利を主張する力をもたらす。
  5. 旅先の国の政治、環境、そして社会的な情勢に対する敏感さを育てる。

特に注目すべきは5つ目の定義で、「ツアー客に対して、旅行先の地域の情勢について、「敏感さを育てる」と規定している点。「知識を深める」のではなく、「敏感さを育てる」という言い回しが、独特です。

続いて、柏木さんは、例としてマレーシアのボルネオ島の奥地のジャングルに囲まれた小さな集落へのエコツアーをあげてくれました。

川をチャーター船でさかのぼり、小さな集落にある現地の人の家に泊めてもらい、川での漁や、芋の収穫などを一緒に体験することで、伝統的な生活に対する理解を深めることがツアーのねらいです。僕も多くのエコツアーを見聞きしてきましたが、これはかなりディープなものでした。地域の環境や生活への配慮もよく考えられており、かなり質の高いエコツアーと言えます。

現地の人に経済的な恩恵を与え、生活を維持できるようにすることもねらいで、実際、この地域のほかの集落は、アブラヤシのプランテーションに土地を買収され、プランテーションの労働者になることも多く、経済原理に巻き込まれて生活が破壊されてしまいます。この集落では、日本からのエコツアーを受け入れることで、プランテーションには土地を売却しない道を選び、伝統的な生活を維持しています。エコツアーのよい面が個々に見て取れます。

しかし、実際にはツアー客が落とす現金で生活は少しずつ変っています。現金を獲得するとまず子供に教育を受けさせようとするのはどこの国も同じです。しかし学校は地域にはないので、離れた街の寄宿舎に入れることになります。その結果、子供たちは学歴はつけることができるものの、地域の伝統生活にもどるのが嫌になってしまい、街に定住することも多くなります。現金収入がもたらされて生活が楽になる反面、次の世代が街に流出してしまうことで、集落が持続しない可能性もあるのです。

一方、ツアー客に漁を体験させる関係上、川に汚物やゴミを垂れ流す習慣は改められ、汚染は少なくなるという効果もありました。その一方で、この集落の隣接地はアブラヤシのプランテーションになってしまい、そこから流出する農薬や化学肥料で川が汚染され、漁の大将である小魚やシジミが減ってしまうと変化も出ています。汚染がひどくなれば凌駕できなくなる可能性もあるでしょう。

このように、十分配慮されたエコツアーであっても、地域社会への影響は避けられず、それが「わずかである」とも言えません。確かにプランテーションに買収されて、奴隷に近い状態の労働者になるのは、大きな問題です。しかし、貨幣経済が少しずつ侵入してきて、従来の伝統生活は維持できなくなっています。服を買う、テレビを見たい、携帯電話もほしい。そういう気持ちを無視することはできません。エコツアーで伝統的な集落の生活が維持できる反面、問題もあるわけで、何がよいエコツアーなのかを決めることは、単純ではありません。

そうであっても、さまざまな世界をみたいという先進国のツアー客の気持ちと、プランテーションのような資本主義の侵略を防ぎたいという現地の人々の気持ちを、エコツアーが結ぶのは事実です。

ほかにも、広くエコツアーと言うものを見回してみれば、中国への植林ツアーや、北欧の環境教育を見に行くツアー、コスタリカの原生的な自然を見に行くツアーなど、さまざまなスタイルがあり、それぞれ、よい面とよくない面を持っています。人間のやることは、いずれにせよ、善悪両面がある、ということの象徴のような感じです。

しかしそうであっても、少しでもメリットを増やし、デメリットを押さえられるようなエコツアーは、もっと増えていいでしょう。価格がどうしても高くなりがちだとか、予定がスムーズにいかないことも多いなど、旅行としての課題も抱えつつも、もしこういったエコツアーに興味があれば、ぜひあなたも旅先として検討してみてはどうでしょうか。

さて、来月のエコエグ講座は、以下の通り。

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■2010年1月12日(火) 19:00--21:00
「環境と哲学・宗教はどう関わってきたか」
*日本は伝統的、宗教的に、自然と調和する思想を持ち、一方キリスト教は自然を克服すべきもの、支配すべきものと考えると言われます。宗教や思想が、現在の環境問題とどう関係しているのか、その構造について学びます。
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ぜひお出でください。

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