(by paco)映画「剱岳 点の記」をみた

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(by paco)映画「剱岳 点の記」を見てきました。

山は、のぼるのは疲れるから苦手なんだけど、見るのは好きなpaco。六兼屋の窓からも甲斐駒ヶ岳を見ながら生活しているわけだけれど、甲斐駒にも赤岳(八ヶ岳主峰)にも上ったことがなく、クルマやロープウェイで行けるようなところばかりを選んでいます。

この映画を知ったのは、去年5月に立山黒部アルペンルート(旅行記1 / 旅行記2)に行ったとき。この映画ロケ中ということで、あちこちに映画予告のポスターが貼ってあり、完成したら見たいなと思っていたのでした。

どんな映画化はポスターからはよくわからなかったのですが、明治に剣岳に登った人たちの話、新田次郎の原作、ということで、見る価値はありそうかなと。

というようなこともすっかり忘れていたのですが、偶然、公開中であることがわかり、2週間ほど前に行ってきました。

この映画の魅力は、なんといっても雄大な北アルプス、剣岳周辺の風景が、現地ロケでふんだんに見れること。映画館で見るとスケールも大きくて、僕などはいかなくても十分、という感じの臨場感です。

超ベテラン映画カメラマンの木村大作さんが初監督ということで、撮影はまさにカメラマン視点。ストーリー以上に、映像美がすばらしい。

J-WAVEでのインタビューを聞いたのですが、監督をやろうという動機ではなく、この作品を映画化したい、という一心で撮影に入ったとのこと。新田次郎の同名の原作を映画化したい、でも監督する人も、撮影する人もいない、では自分でやろう、と。

そんなこともあって、前編フィルムカメラでの撮影、CGはいっさい使わずに、オールロケで愚直にとられています。当然、剱岳を含めて標高3000メートル級の立山山系での撮影ですから、キャストもスタッフも山に登らないと撮影にならない。でも山の天気は気まぐれですから、上ってもとれるとは限らない。上ってみたらガスがかかっていて、4時間待機、結局撮影できずに下山、というようなこともあるわけで(メイキングVTR on web)、キャストからは「この映画にキャスティングされたこと自体が"遭難"したようなもの」というギャグも。

ストーリー自体は、新田次郎の原作の通り、明治時代、このあたりの地図を作成するために三角点もうを作り、測量を行った陸軍陸地測量部の柴崎芳太郎と、現地の案内人・宇治長治郎の物語。

立山山系は江戸時代までは信仰の山で、周辺の山全体が「曼荼羅」、つまり仏の山と地獄に塗り分けられ、そこを巡ることが信仰の対象でした。剱岳は「針の山」とされ、上ってはいけない禁忌の山だったのです。測量のためにそこに上ることは禁忌を犯すことであり、一方で、仕事のためならいかなるところにもいくという職業人としての測量官の考えがありました。

測量官の柴崎も案内人の長治郎も、信仰の人ではないので、禁忌を破ることには抵抗がないのですが、興味深いのは、明治末期の日本人の考え方。一部の人は信仰や禁忌を重視しているのですが(信仰登山の案内をしている集落の人たち)、それ以外の人は、信仰に理解を示しながらも、「もう迷信の時代ではない、登れない山はない」と、徹底した合理精神を発揮していくわけです。旧来の考えと無理に戦わず、軽やかに乗り越えていく合理精神感じられて、現代の日本人よりずっと理性的な人たちだったのだと感心しました。

時代は日露戦争後の20世紀初頭。ちょうど100年ぐらい前です。エジソンが発電システムを開発し、電灯をともしたのが1880年(明治13)、キュリー夫妻が放射性元素を発見し、パスツールが細菌学を確立した時期。映画の舞台である1906年(明治39)には、立山の下の温泉に自家発電機とモータによってくみ上げる温泉宿が描かれています。世界は今以上に科学のパワーを実感していたのでしょう。

明治の人は偉かったと親に聞かされて育ったクチですが(両親は昭和元年産まれ)、こうして映画の中に描かれる明治の人は、合理精神にあふれ、体も心もタフで、目的を明確にする力を持ち、かつ新しいものを受け入れる柔軟性も持ち合わせていたことがわかります。

実際、山梨や長野には明治時代に作られた学校などが残っているのですが、こういう場所を見学すると、昭和初期ならともかく、明治に作られたことにびっくりさせられることが多いのです。逆に言えば、昭和に入ったころから日本人は合理精神を失い、それが抽象的なマインドを産み、「神の国、日本は戦争に負けない」というような考えになって、敗戦につながったのかもしれません。

前人未踏の山に登る、ということは、簡単には登れない山ということであり、知恵と能力を鍛えた人間だけにできることです。いつの時代でも、合理精神とチャレンジスピリットが必須だったのでしょう。そんな日本人の挑戦魂が感じられる作品に仕上がっています。

映画は現在も好評公開中(2009/07/21)。東京では品川プリンスシネマなどでやってます。暑い時期、都会で山の空気を感じられる作品です。

※ちなみに、そこそこ混んでます。平日の昼間に行ったのですが、6割の入りでびっくり。中高年の「山のたしなみ」はの人も多く見かけました。そのあとデジハリ大の学生に話したら、意外に興味を持っている学生が多いのにもまたまたびっくり。

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