(by JIN)
最近読んだ本「宗教と国家」は、20世紀の紛争解決に宗教が活用された事例がいくつも紹介されていました。たとえば、戦後のフランスとドイツの和解、南アフリカのアパルトヘイト撲滅、フィリピンの民主革命、等です。
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解決に宗教が役立った理由の1つとして挙げられているのが、宗教の持つ「物語性」が、紛争当事者の心の琴線に触れたのではないか、というものです。人の依って立つアイデンティティは、1つの「物語」であると考えられます。「どこで、どんな環境で生まれ育ち、どんな信念の元に生きているか?」という一連の生き方は、1つの「物語」と捉えられます。他方、宗教も、その起源には「物語」があります。多くの宗教の「物語」の骨格は、「苦しみ」とそこからの「救済」です。この「救済」は「紛争の解決=平和」と結び付くことがあり、それが紛争当事者の心の奥底にある「物語」と触れ合うとき、紛争解決の糸口がつかめる場合がある、というのです。
この見解には、違和感を覚えながらも、納得できる部分もあります。ただし、納得できるのは、一定の条件の下で、という留保がつきます。今回は、その辺りの事情を掘り下げてみます。