(by paco)田母神論文で退職させられても、言論の自由とは矛盾しない

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(by paco)ちょっと前のことになりますが、航空自衛隊の航空幕僚長(軍人トップ)だった田母神氏が書いた論文が問題になりました。

この論文の何が問題なのか、という点について、ちょっと書いてみたいと思います。ちなみに論文自体は、こちらで読めます。

論文自体は昔からある論旨で、目新しいものではありません。問題になったのは、それが、現役の軍人トップが発表していた点と、もうひとつ、このトップが、航空自衛隊の隊員を指導して、自衛隊員の多くが同じアパの懸賞論文に応募していた、という点のふたつです。

で、最大の問題である、前者、現役幕僚長がこういった論文を書くことのぜひや、それに対するペナルティをどう考えるか、という点です。政治の場では、シビリアンコントロールが問題にされました。では、シビリアンコントロールとは、何が問題なのか。

これについて、僕がワッチしている識者の1人、軍事評論家の神浦元彰さんは、「絶対にあり得ないのは、田母神氏を懲戒免職とすることである。外部に発表した論文が政府見解と異なれば「懲戒免職」という前例になれば、憲法が保証した言論の自由を禁じることになる。」と書いています。
http://www.kamiura.com/new11_2k8.html

しかし、これもちょっとピントはずれです。懲戒免職にしたからと言って、言論の自由を侵害したことにはなりません。警察がこの論文を問題にして、何らかの罪で起訴し、有罪にしようとすれば、言論の自由が問題になるでしょうが、懲戒免職はある個人がその職にふさわしくない行為をしたということを示すことに過ぎず、その職に無ければ問題ないということなら、懲戒免職は妥当な懲罰です。実際、同じ論文を普通の立場の人が出せば、あるいは自衛隊員であっても、平隊員が出しても、問題になることはありません。

問題になったのは、軍をコントロールする立場にある幕僚長が、政府の公式見解とこなる見解を公式に表明したことにあります。

日本政府は、1951年のサンフランシスコ講和会議でサインし、連合軍による占領から解放されて、再独立を果たしました。この講和条約では、第二次世界大戦を「最後の世界戦争」にすべく、国際連合をつくること、日本もこれに参加することが含まれていて、日本は世界戦争に負けたという立場で国際社会を生きていくことを約束した条約なのですね。そしてそれ以降の日本政府は、この世界のわく組を遵守するという条件の下で、国際関係が許容されているのであって、これを意図的に壊そうとすることは、サンフランシスコ講和条約を破棄し、再び戦争を起こそうという意図を持ち始めた、というように、世界から見られても「よい」ということを意味しています。

これが日本政府の公式の立場なので、政府の要人が講和会議の内容を否定するような発言をすれば、当然「日本は今の世界のわく組を、実力で壊そうとしている」と理解されても仕方がない、ということになります。

こういうわく組の中で、軍のトップがこのわく組を否定する発言をすればどうなるか。政府の見解と異なる発言をすることで、軍が政府に挑戦し、さらに世界秩序に挑戦していることを意味します。当然、米国も中国も韓国も欧州も、これを挑戦と受け止め、挑戦しようとする軍幹部を政府が容認すれば、政府も秩序の破壊に挑戦しようとしてる、と受け取られてしまいます。

この論文は言論の自由で語る話ではなく、政府と日本の立場を根本的に破壊する(現状を否定する)かどうかの問題で、そういう意図を持っているか、あるいは自ら読み取れないような軍人をトップにつけていることが、問題になるのですね。日本のポジションを破壊するような行為を、立場を利用してやろうとしているのが田母神論文であって、模試これが軍人トップでなければ、まったく問題にもならないわけです。

そこで、日本の安全保障上の立場を守るために、政府は田母神氏の職を解く必要があったわけですが、結局、懲戒免職にするよりも、降格とそれに伴う定年退職で、決着をつけました。懲戒免職は、確かに重大な決定で、それを避けたとも言えますが、あれこれ議論をしている間に問題が大きくなったり、あいまいになったりするより、現実的な方法できっぱり首を切った方が、はるかに現実的に意味がある対応で、これを麻生首相に提案した人物はなかなかの知恵ものだと思います。

繰り返しますが、言論の自由と懲戒免職はまったく矛盾しません。実際、田母神氏は退職しても、いまごろ、さまざまな職に誘われているでしょうから、言論のぜひによって社会から抹殺されているわけではなく、言論の自由そのものは守られているのです。

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