(by paco)「闇の子供たち」見てきました

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(by paco)先週、「映画が公開される」と書いた「闇の子供たち」。見てきました。

いや?参りました、グーの音も出ません。すごい映画です。

前回紹介した、原作小説「闇の子供たち」のストーリーを、あまり変えずにわりと忠実に映画化しているのにはちょっとびっくり、もうちょっとエピソードを取捨選択するとかしていると思っていたのですが、わりと忠実です。もちろん、小説版が400ページもおよぶ対策なので、カットしたシーンも多いのですが、全体として、原作の主要なエピソードは盛り込まれている感じです。

ストーリー展開もほぼ原作通りなんですが、なんと、ラストシーンがかなり変っています。ラストシーンは、実はごく短く、ストーリーが変わったとは思えないようなつながり感なんですね。でも、あとに残る印象がものすごく強い。え?っ? という感じ。かつ、そのシーンが、明確な「答え」を用意せず、示唆しているだけなので、「そういうことなの、もしかして???」というちょっと未消化な、でも「それ以外ないんだろうな」という状況に、観客が放り出されてエンドロールです。エンドロールが回っている最中も、もしかしてエンドロールのあとに本当の「答え」がスッキリ示されるのかなと思っていたのですが、そういうこともなく、劇場内は灯りが付きました。

う?結末を言いたい、が、さすがに封切り中なので、やめましょう。ほとぼりが冷めたら、書いちゃいます。

この衝撃のラストを別にして、映画の評価ですが、たぶんふたつの観点があると思います。ひとつは、テーマそのものである、幼児性愛者・幼児買春と、子供の臓器売買の観点。つまり問題の告発そのものの観点です。もうひとつは子供の問題を別にして、社会派のドラマとしてのおもしろさという観点です。

前者の社会問題の告発という点では、原作では言葉だけで表現されていたものが映像化され、その映像がタイのむっとするモンスーンの湿度や暑さまで感じられるリアリティのもとに、子供たちが虐待され、性の道具にされるシーンがしっかり描かれて、原作の時の印象が完全に映画の映像で上書きされた感じです。印象としては、小説で読んだときにより、子供の年齢が上、という感じがしました。8?15歳ぐらいの子供たちなのですが、小説で読んだときに僕の頭に浮かんだのは、4?7歳ぐらいの印象でした。幼稚園ぐらいの小ささですね。そのせいもあって、幼稚園児みたいな子供を性の対象にするのかよ、と感じ、どこかピンと来ないというか、性向としてそんなやついるのかよという印象もありました。
でも映画ではそのまま小学校から中学校ぐらいの子供だったので、ロリコン趣味の対象になるんだということがすっと受け入れられて、逆に幼児性愛者の異常さにリアリティを持つことができました。これは映像の持つパワーだと思います。

臓器売買に関しては、映画では、買春の対象になった子供が、さらに転売されて、こぎれいな服を着せられて病院に向かい、そこで生きたまま麻酔をかけられて臓器を取り出された上で、放置(殺される)分けですが、こういった非人道的なことが行われかねない「闇の世界」(当然、マフィアや汚職の警察、医師などもからむ)状況に、リアリティがあります。

果たしてこれは真実?という疑問はありますが、充分ありえる話だと思います。というのは、タイでは腎臓や肝臓の売買は合法的に行われていて、貧しい農民がカネのために腎臓を一つ売ると言うことは、実際に行われています。以前見たドキュメンタリーによれば、確か、1つ売ると30万円ぐらいだったと思います。「腎臓はふたつあるから、ひとつとっても大丈夫」と臓器ブローカーから説明され、金に困って一家の父親が腎臓を売るのですが、ひとつ腎臓を失えば、代謝が落ちて体力ががた落ちになり、思うように働けなくなって、かえって貧しくなってしまうという現実があります。受け取った金は確かに大金ですが、借金の返済と、新たにバイクやテレビを買ってしまい、すぐになくなってしまうのです。

インド洋津波の時には、親を失った子供たちがたくさん行方不明になったと言われ、その多くが人身売買、そして臓器提供の対象になったのではないかと言われています。

映画、原作ともに、あくまでも「フィクション」ということになっていますが、「ドキュメンタリ」にあえてしないことで、かえって「実際にカメラが入ることはない」闇の世界をリアルに描くことができ、真実をあぶり出した、ということができるかもしれません。

当然ですが、こういった「現実」を突きつけられることは、見るものには衝撃的で、何もできない自分にやるせなさを感じざるを得ません。でも、何もできなくても、「知る」ことはでき、人に「話す」ことはできる。誰もが関心をもたいことが、虐待される子供たちにとって最大の「闇」だというメッセージは、よく伝わってくる映画です。

さてもうひとつの、社会はドラマのストーリーの方ですが、改めて幼児性愛や臓器売買の情報を取り去って、別の問題に差し替えたとしても、サスペンスの要素がうまくミックスされて、この点は楽しめるエンターテイメントになっていることに気がつきます。第一のテーマに振り回されずに、ストーリーのエンターテイメントをきちんとつくれたところが、監督の力量と言えそうです。

最後に、付け加えておきたいことは、映画館によく人が入っていた!という点。渋谷スペイン坂上のシネマライズでの公開ですが、平日の夜の回で、500人ぐらいの劇場が7割以上の入り、という感じでした。こういったタイプの映画にこれだけの人が集まることに、びっくりすると同時に、日本人も悪くないなあという印象を受けました。

キャストがいい、というのも理由でしょうね。江口洋介、妻夫木聡、宮崎あおい、佐藤浩市。監督、阪本順治。エンディングテーマを桑田佳祐が歌い、これが凍みます。

いつまでやっているかわかりませんが、そして誰にでもお勧めできる映画ではありませんが、僕としてはぜひ見てほしい映画です。

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