(by paco) 中国のしくみを知る

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(by paco)中国というお隣の国が、本道はどんな国で、これからどうなっていくのか。人口も国土も大きな国なので、隣人と指摘にならないわけはありません。しかも、政治体制も違うし、過去の歴史上の問題もあって、率直に話ができる関係になっていない。華々しく見える部分が目立つだけに、本当のところはどうなのか、知りたくなります。

中国の仮面資本主義

という本を読んで、なるほどな?と思ったのでご紹介。
著者はフランス生まれのジャーナリストということで、内容はしっかりしています。

中国は派手に発展しているように見えるけれど、理解を誤らないように、という視点で書かれているのですが、その理由をいくつか紹介しましょう。

まず、急成長を続けるGDPですが、統計がいい加減で、1?2%は多めに発表されれているという点。これは、データの取り方という問題と意図的に水増しされているという問題があり、水増しの中には政府がやっていることと、地方政府がやっていることがある、ということでした。さらに人口増加率や農村から都市への人口移動の進展を考えると、2?3%のGDPの増加がないと、人民を維持し、食わせていくことができないというしくみで、合わせて3?5%は実質的には成長と呼ぶべきではないという結論です。8%の成長といっても、実質は3?4%なのではないかと。それなら、先進国の好景気とそれほど変らないというわけです。

また資本主義の進展も、先進国やアジア諸国のそれとは区別して考える必要がある、と警鐘を鳴らします。基本的に中国共産党独裁の国で、独裁政権を維持することが先にある。成長企業も含めて、有力企業のすべてが共産党員か、その関係者によって過半数の株式会社が所有され、株式市場での値上がりの恩恵を受けているのは共産党員であって、国民ではないという点。共産党員は全人口の8%程度で、経済が発展しているように見えて、国全体が富む構造にはなっていないと指摘します。その証拠に、経済発展のわりに中産階級が増えてない点があり、その理由として中産階級が政治的な発言力をつけて、共産党に民主化と政治参加を求めることをいちばん恐れているという分析でした。

日本を含めて、途上国から中進国、先進国へを進むと、その家庭で中産階級が生まれ、政治参加し、民主化せざるを得ないというのが通常の成長で、台湾、韓国、タイなど、多くの国がその流れをとってきました。中国はそういう動きではなく、それを「中国型で、優れている」と主張しているものの、実態はそれが発展と言えるのかどうかを疑っています。

共産党関係者を富ますだけの結果に対して、人民の不満は高まっていて、それを抑えるためにナショナリズムを高め、外に的をつくる必要があり、日本も台湾もその標的になっている、という分析も、納得できます。

先日、石油などエネルギー資源の研究をしている人と話したら、「日本はアフリカの油田などで中国に会負けているのは心配」といっていたのですが、僕はちょっと違う見方をしていて、中国はこういうしくみの中で、いわば資本主義的ではないお金の集め方をして、その金を油田に投資している。それは資源確保という点では「有り」ですが、同時に「採算性の低い油田を高く買わされていること」なのかもしれません。資本主義のシビアさに立脚した投資なのかどうか、という点です。日本の商社や石油会社は、やはりデータに基づき、厳密に資本主義的な判断をして、限界を超えた投資はしていないので、買い負けている。負けているけれど、そのカネは石油を買うことに使うより、石油を使わないため(省エネなど)に使った方が、効率的ということも言えます。

漁業資源や穀物で買い負けといわれる日本ですが、負けるが勝ちという側面もあるので、多面的煮物を見る必要があります。

中国がどう動くのか、北京オリンピックもまもなく終わり(そのまえに始まるけど)、いよいよ目が話せない時期です。

※知恵市場ではyukiさんが中国現地レポートを送ってくれているので、そちらもお読みください。

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村上龍発行のJMM(2008年7月3日発行)の『大陸の風?現地メディアに見る中国社会』第127回に、こんなコメントがありました。

自己レス、補足まで。

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北京市内の大学に勤めるある友人によると、「6月
30日までにすべての授業を終え、非北京市出身学生をすべて帰省させること」とい
う指示が当局から出ていると言っていた。さらにはだんだん本格化する交通規制に、
北京に自宅を持つ友人たちも「絶対に北京を離れる」と口々に言う。

 街の厳戒態勢とオリンピック。中国はこうやって日頃から北京に親しんだ人々を追
い出して、どんなオリンピックをしようというのだろう。わたしの耳には、数カ月前
の聖火リレー騒ぎの際にある時事論説員が言った、「政府がオリンピックにムキにな
ればなるほど破壊者はそれを標的にするだろう。オリンピックを民衆の手に戻すべき
だ」というコメントが響いている。
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by ふるまいよしこ :北京在住・フリーランスライター

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