(by クヌギー) 本読みが本を読まないとき 第3回 アルバイトをすること

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(by クヌギー) 週4日、家の近くで事務のアルバイトをして生計を立てています。データ入力の仕事です。今回はそのアルバイトのことを書きます。

アルバイトをするのは生計を立てるためですが、職場は、組織の中で働く楽しさを味わい、自分の社会性を維持する場所でもあります。

ちょうど今、4月から6月までが部門の繁忙期なので早出や残業をします。
残業なしでも食べていけるだけの稼ぎにはなるので、残業をする必要はありません。でも、みんなが忙しくしているときにひとりでさっさと帰るのは気が引けます。また、週4日めいっぱい働いてしまうと、本のための3日のうち丸1日以上を完全に休まないともちません。
得意なスタイルである“こつこつ続ける”は、山場を作らないことでもあります。そこで、早く帰る気疲れと、残業による身体の疲れのバランスを考えて、「フル残業は週2日まで」というルールを決めました。この数か月分の残業代はちょっとしたボーナス、お楽しみです。

「みんなが忙しくしているときにひとりでさっさと帰るのも気が引ける」という感覚は、一般的なものなのかどうかはわかりませんが、ある種の連帯感だと思います。そして、連帯感を持てる組織で働くことには独特の楽しさがあります。
正社員として10年以上働いていたせいか、組織の中で働く楽しさはなかなか忘れられるものではありません。
正社員で働いていたころと違って、業績や自己実現といった概念はない仕事ですが、同僚がいることや、残業して「助かります」と言われることはやっぱりうれしいものです。しかし、その楽しさばかりに気をとられていると、余分にがんばって残業してしまいます。残業をすればお金もたくさんもらえて、それはそれでうれしいけれど、本業は“本のこと”です。残業代と、本に関わる機会費用を天秤にかける冷静さを常に持ち合わせる余裕が必要です。
幸い、組織にも人材として熱心に育てようとする向きがないので、こちらにも献身的になるほどの帰属意識や愛着が湧いてきません。今のところ、組織で働くことと“本のこと”、2つのバランスが取れているようです。

ところで、職場で社会性が養われることは、当たり前のことだと思いますが、今の小さな暮らしの中では、アルバイトをすることがそのための大切な手段です。

今の同僚はみなアルバイトですが、ある程度続けていくつもりの人はそれなりの責任感や期待に応えようとする前向きさを持ち合わせています。いっしょに働いていて気持ちがいい人が多いです。
また、年齢や学歴、キャリアがさまざまなので、少し親しくなって話をしてみると意外な本業やバックグラウンドを持っている人もいて(実際、私も「古本屋さんやってます」と言うと興味を持ってもらえます)、おもしろいです。

また、広い部屋にはいろいろな部署があり、となりは社員の方ばかりの別の事業部です。
私のいる入力の部門はしーんとしていますが、となりからは声がこちらまでよく響いてきます。それくらい、マネジメントがにぎやかな人です。マネジメントと部下の会話がかみ合っていないこと、指示と報告がなされていないことがしょっちゅうで、横で聞いているとどこが伝わっていないのかが何となくわかります。

ひとり静かに入力作業をする合間に、同僚のことと今の非正規雇用の問題、となりの部署がうまく回っていない原因などをつらつらと考え、分析しようとします。それらについて結論を出すことはしませんし、具体的にアドバイスをすることもありません。断片的なことがばらばらと頭の中に散らかるばかりです。
でも、“つらつらと”でも考えていると社会の一員としての自分を少し意識できます。たいして人の役に立ってもないし、税金もたくさん納められていないけれど、働くことで保たれる社会性はたしかにあると、静かな職場でふと気がつきました。

あらためて見つめてみると、たかがアルバイト、されどアルバイトです。


(お知らせ)
第4回は5月30日です。毎月10日と25日に投稿予定。来月から予定のペースに戻したい!

(参考)
静かな職場では旅行のお土産を配ったりしないのかな?と思っていましたが。
図書室たき火通信「カリントまんじゅう」 →http://takibilib.exblog.jp/8558929

(1冊)
繁忙期が終わったら、堀江敏幸さんの「熊の敷石」に描かれているような休日を過ごしたいです。


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クヌギー/功刀貴子

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