(by paco)[ 知恵市場 Commiton]301 植林活動の実際

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(by paco)有料版[知恵市場 Commiton]から転載です。見本としてお楽しみください。


今週末、4月14日、15日(2007年)に、Present Tree「ヤマガラの森」の植林をおこないました。今回はそのレポートです。

植林をおこなう前に、準備が必要です。事前に、何が必要なのかを考えることが、まず準備。この「何を考えるかを考える」というアプローチは、クリティカル(ロジカル)シンキングの方法論そのものです。

ロジックツリーで見ると、こんな感じですね。

1.植える苗
1-1.苗の種類
1-2.苗のグレードと価格
1-3.苗の発注先
1-4.納期
2.植える方法
2-1.植える密度
2-2.分散のコンセプト
2-3.植える具体的な方法
3.会の運営方法
3-1.メンバー募集と確認
3-2.資材のリストアップ
3-3.資材の調達
3-4.メッセージ
3-5.タイムスケジュール

こんな感じでリストアップした上で、時間軸で早めにやることと、あとからでもいいものに順位づけて実行するわけですが、たとえば、3-1.のメンバー募集のようなものは、二段階に分けて行うほうが効果的です。八ヶ岳まで来るということは、かなり前に日程を決めたいと思うのが普通なので、まずこれが一番先におこなう必要があります。今回は、計画自体の実行をほぼ決めた段階で、植林にいちばん季節的によい4月におこなうことにして、回数を決めるわけですが、機会を増やせばこちらの運営の負荷が掛かり、一方、植林の効率はある程度の人数が集まったほうがよいので、あまり回数をやることには意味がありません。また、植林に来る意思がある人なら、多少の予定は後回しにしても、その日程に来たいと思うはずなので、週末2回、4日間を設定すれば良いだろうと考えました。ちょうどゴールデンウィークに掛かるので、この4日間にどうしても来れない人は、GWに来てもらえばいいと考えて、4日間を設定しました。この日程を、2月ごろには決めて告知して、寄付の申込と同時に、植林に来るかどうかを考えられるようにしました。その後、3月下旬に最終的な実行計画をメールして、集まってもらったのですが、それぞれ20名、21名という人数が集まり、告知については成功したと思っています。

次に時間が掛かりそうなのが、苗の発注です。苗は自然が相手のものなので、今日発注して明日来る、というようなわけにはいきません。ただ、事前に地元の「木こりさん」に聞いておいたので、発注先と納期についてはだいたい1か月前程度でなんとかなるという感触はつかんでいました。そこで、3月中旬に、地域の峡北森林組合に電話をかけて主旨を伝えて、こちらのおおよその発注内容と納期を伝え、見積をもらいました。とはいえ、予想通り、このやりとりは都会のビジネスのようには行かず、まず、電話でのやりとりでメールに切り替えるのに時間がかかりました。でも数回のやりとりでメールに切り替えることができたのは、さすがに時代の変化でしょう。結局、予定した発注を予定通りに届けてもらうことができるようになったのですが、これが確定したのが植林の1週間前で、気分はけっこう綱渡りでした。田舎の人を相手にするときは、時間の余裕と、明確な意思表示(このときまでないとだめだ、何とかしてほしいということ)、納品場所や納品に来る人、その携帯電話での連絡先、支払い方法など、緻密に連絡を取っておかないと、ミスが出る可能性があります。このあたりは、田舎暮らし6年間の経験がものをいうところです。

結局は発注したとおり、4月14日(植林当日)のちょうど昼ごろに到着し、ぴったりのタイミングでした。とはいえ、これにはちょっと後の話があり、翌日、15日(今日)の朝起きてみると、家のすぐ前に苗の入った一袋が置いてあります。あれっと思って外に出てみると、メモ書きが挟んであり、「昨日、ケヤキの苗を一袋おろすのを忘れました」だって。わざわざ朝届けてくれたようです。しかしこういうミスは、都会の比ではなく普通に起こるので、あわてず騒がず、淡々と対応するのがいちばんです。

発注にあたっては、何種類の樹種を植えるか、いろいろ考えたのですが、当初は、本来の雑木林にある樹種に限定して考えていました。しかし考えているうちに、だんだん欲が出てきて、普通の雑木林にはない、ソメイヨシノや紅梅、白梅も植えることにしました。本来の雑木林を楽しむにはややマニアックな森への関心が必要ですが、花が咲く、実が落ちる、紅葉がきれいといった魅力があれば、マニアックな森への関心にも続けやすいと考えたのです。ちなみに「マニアックな森への関心」とは、たとえば「タラの芽を見つけて天ぷらにして食べる」とか、「春一番にカタクリが咲くようにする」とか、ふつうのとか偉人には何を意味しているのかわからないようなことが多いのです。その点、「3月に梅が咲くよ」とか、「クルミの実をとって食べられるかも」というのは、かなりわかりやすいと言えるでしょう。都会の人が頼める森をつくり、森へのかかわりや関心を深めてもらうことが目的ですから、入口をチャーミングにすることは重要だと考えたのです。案の定、寄付をいただいた方からのリクエストは、ソメイヨシノや梅、クリやクルミが多く、ねらいがあたっていると感じています。

次に、その苗を具体的にどこに植えるかの計画が必要です。樹種は13種にしたので、場所によって樹種を集めるという方法も考えられるし、普通の杉林のようにきれいに列を作って等間隔に植えるという方法もあるのですが、今回は自然に近い雑木林に見せたいというのがあるわけですから、樹種はランダムに入っていて、並びも列を作らずに、雑然とした森になるように、分散して植えるようにしなければなりません。僕が一人で植えるなら、この考えに沿って植えていけば良いだけですが、多くの人が短時間に作業して、一定の達成感を感じてもらうには、方法論が必要です。

冬の時期から森を何度も歩いて考えたのは、土地を区画して、その区画に対してばらばらの樹種を割り当て、その区画の仲でランダムに、整列しないように植えれば、目的が果たせることになります。

ではどのぐらいの面積でくくればいいのか。これも土地を歩きながらおおよそのイメージを考えたのですが、結局、当初考えたのより少し小さめの、10メートル四方、100平方メートル程度に土地を区画することにしました。また、土地の最上部と最下部はイベントスペースにするために、植林は当面しないことにしました。

土地の公図(登記上の地図)を見ながら見当をつけ、10メートル感覚だと、区画するための杭が30本ぐらい必要なことを割り出しておいて、植林の前のかいに六兼屋に行ったときに、近くのホームセンター「Jマート」にいって、手頃な値段の杭を30本買っておきました。それに加えて、30メートルまで計れる巻尺、杭が目立つように頭を塗るための赤いスプレーペンキ、作業者の手を守る軍手、お茶のペットボトル数本などを用意して、当日に臨みました。

そうそう、植えるためのスコップ、バケツも必要です。クルマで来る人には、持ってきてもらうように頼み、うちにあるスコップやクワ、バケツを総動員(意外に数があります)、さらに、両隣の別荘のオーナーに頼んで、いくつかかしてもらうと、15組ぐらいは確保できて、何とか人数に間に合いそうです。

前日には、具体的な進め方を考えて、A4のペーパーに落としてちょっとした紙芝居に仕立て、それぞれの日に来る参加者名簿をつくり、携帯の連絡先や希望の樹種を記入したリストをつくり、山に上がってからも情報がチェックできるように準備しました。

いよいよ当日。まず、六兼屋の庭でミーティングを行って、メンバーの自己紹介のあと、今回のコンセプトをかんたんにレクチャーし、作業の注意、作業の手順を説明します。その後、現場の山の下に集合して、いよいよ最初の作業である「地割り」に入ります。

みんなで山に上がり、最上部に1箇所ある杭を起点にして、上部に30メートル四方の空きスペースをメジャーで測り、そのスペースを麻ひもで区切ります。その下を、隣地との境界に沿って10メートル間隔で杭を打っていきましょうと指示、土地の左右に杭を打つために、「10メートルの麻ひもメジャー」を作ってもらいます。これを使って、順次下に向かって10メートル間隔に杭を打ち、頭に赤いペイントを塗り、上から番号を振っていく作業を行いました。細長い土地の縦方向に枝や細い幹を摘んだ山があるので(土の流出を防ぐ意味もある)、その山で土地が縦に半分に分かれているのですが、これをちょうど境界線にして、A系列とB系列のふたつの細長い土地に区分けされました。この系列の幅がばしょによって7?15メートルいう感じです。これで斜面の縦方向に等間隔に杭があるので、それを頼りに、おおむね1区画(ほぼ100平方メートル)をつかむことができるようになります。

その後、いったんしたにおりて休憩、今度は、植える苗を土地においていく作業をしながら上に上ってもらいました。当初は、1組に1区画を責任を持ってもらい、そこに13種類を植える計画だったのですが、急遽予定を変更。楽らや紅梅などの樹種をすべての区画にまんべんなく植えることにしました。届いた苗を見ると、すでには画家なり出て樹種と、まだメインの幹だけで、葉が出ていないものがあるのですが、葉が出ているということは、蒸散が激しく、水切れを起こしやすくなります。今回植えきれないものは、2週間後の植林になるので、2週間、苗の状態のままでは持たないと思われるものを優先的に植えることにしたのです(いったん植えてしまえば、少ないながらも地面からの水分を吸収できるので、生き残れますが、植えないと、ごく小さな苗ポットの仲の水分だけが頼りになるので、枯れてしまう可能性があるのです)。

そこで、初日には葉がかなり出ている「ソメイヨシノ」「紅梅」「エゴノキ」を植え、第2日には、「エノキ」「ケヤキ」「カエデ」を植えることにしました。ほかの樹種は、森の下部に穴を掘って苗ポットごと置き、土をかけて「仮植え」しておくことにします。

手分けして、3種類の苗、各40株、計120株をもって上に上がっていき、上がりながら区画に1?2本ずつ苗をおいていきます。上まで上がって植えるべき苗をおおよそ植えるべき場所に置いたら、最上部で苗植えの方法の講習会。まずスコップで深さ20センチほどの穴を開け、その下を軽く掘って柔らかくしたあと、逆さにして苗ビニール製苗ポットをはずし、ポットの中でかたまっている根を崩さないように下状態で穴に入れて土をかぶせ、安定させます。これで植えること自体は完了。この作業自体はけっこうかんたんです。これを順次やりながら、一番下まで行き、その後、植えた苗に水をやる作業。最下部に、六兼屋から長いホースを引いて、バケツに水を入れては、歩いて斜面を登り、植えた苗に、それぞれバケツ1杯ほどの水をやっていくというものです。この、水を汲んで坂を上っているのがけっこうきつい。120本も植えたから、何往復もしなければなりません。それでも、20名ほどになったメンバーの数があるので、思っている以上にはかどります。メンバーの士気が高く、作業効率がすごく高かったのも印象的でした。さすがのメンバーです。

2日目の今日も同じように、「ケヤキ」「エノキ」「カエデ」を持ち上げて植えたのですが、これで240本の植林が完了したことになります。

植林が終わったあとは、各自が希望した樹種の中で、「自分の木」を選んでもらって、ネームプレートの代わりに白テープに名前を書いて貼ってもらいました。ネームプレートができ次第、ぼくの方でテープをはがして、プレートをつけます。ついでに記念撮影して、家族や個人、友人と、写真に残しました。あとでみたら、みんなすごくいい顔をしてました。

よく、植林活動をすると話すと「誰か専門家の指導を受けているのか」と聞かれるのですが、よく調べ、現地をよく見て、徹底的に考えぬして実行すれば、専門家以上のパワーを発揮できます。自分の力を信じることも重要です。

ということで、準備から植林までの流れはざっとこんな感じです。2週間後、後半のメンバーと一緒に、残りの木を植えたいと思います!

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