(by paco) Commiton272一歩を踏み出す人?クヌギさんのStyle

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(by paco)有料版からの転載です。見本として、この記事のシリーズは公開しますので、ぜひお読みください?!

本を読むのが好きな女の子が大人になり、社会人になるときに考えたことは、仕事はそこそこきちんとやりたいけれど、仕事にすべてを捧げるような生活ではなく、ちゃんと好きな本を読む時間がとれるようなところがいいな、ということでした。以前なら「お気楽なお茶くみOL」になりたい人の「志望動機」のようですが、クヌギーの場合、そういうタイプともちょっと違っていて、ちゃんと総合職でしっかりした仕事をする能力も意欲も持っていたのでした。

横浜市立大学で経済学部に所属、ゼミの研究もしっかりやった彼女は、基礎的な知性の面では十分高い能力を持っています。高校時代も勉強はきっちりまじめにやったという彼女のポリシーは、「毎日ちょっとずつやる」こと。というと以下にもまじめに聞こえるわけですが、本人が言うには、「私は追い込みがきかないタイプ。体力もないし、一夜漬けなんてぜんぜんダメ。試験前は早く寝ちゃうから、ふだん少しずつやってないと、結果も出せない」。かといって、「適当にやって、最低限の成績でいいや」というほど、いい加減でもないし、欲がないわけでもない。自分なりにきちんとやりたいという思いと両立させるには、毎日少しずつやり、自分を追い込まないというのが、高校時代あたりからの彼女のstyleになりました。

一見「まじめ」に見るからといって、それがいわゆる「まじめ、努力家」であるとは限らない。追い込みがきかない、体力に自信がない、でも自分なりに納得のいく、高すぎない目標には到達したい(たとえば、学校の成績とか、入学したい大学のレベルとか)。こういう自分の状態や考えがなんとか折り合いがつくところに、その人なりのstyleが生まれる、のですね。

ちなみに僕は、目標や理想は高い、集中力はあり、追い込みもきく、だからこそ、人に邪魔されるのはすごくキライ、その代わり、やったことの目に見えるリターンはほしい、でも飽きっぽくて、ひとつを極めるのではなく多くのことを一定以上の水準でやりきりたい、というタイプ。「多くのこと」の中に、仕事も、友だちづきあいも、家族のことも含まれているのですね。

さて、クヌギーの話。彼女が大学を出て選んだ仕事は、大手ゼネコンでの経理の仕事でした。経理がやりたかったわけではないのですが、会社としても彼女のようなきちんと仕事をするタイプにはふさわしい配属先だったのでしょう。彼女としても、仕事のペースが読めて忙しすぎず、スペシャリティはあるもののの、責任が重すぎないその仕事を気に入りました。仕事が忙しい決算期などを除けば、休日も取りやすく、好きな本を読み続けることができるし、収入面でも満足できたのです。

配属先では上司に恵まれ、ほどよくオリジナリティが発揮できる仕事をタイミングよくもらうことができました。キャリアを重ねるにつれて、もっとマネジメント寄りの仕事をしないかと誘われるのですが、それで忙しくなると、体力面で自信がないし、そういう仕事を望んでもいないし、大好きな本を読む時間もなくなるし、ということで丁重に断り、平社員としてできる仕事で、最大限の結果を挙げてきました。

ある意味、地味な仕事をきちんとやってきたので、「これをやりました!」というような実績がたくさん話せるような人ではありません。かといっていわれたことだけをまじめにやるようなタイプではなく、「職場で必要とされる、けっこう知的能力が必要だけれど、花形ではない仕事をていねいに、かつスピーディにやるタイプ」だったのだと思います。会社の方針の変更にあわせてデータを適切に作りかえるとか、それに対応する作業の仕組みをつくったり、「今度はこんな方針になるらしいよ」というちょっとした情報を耳にすれば、特に指示されなくてもそれに対応した仕事に切り替える方法を考えていたり。こういう人が一人いると、仕事がスムーズに行くだろうなあというような、ほどよい裏方ができる人なのだと思います。

こうして、彼女としてはけっこう楽しく、気に入った仕事をやる中で、人の紹介でグロービスに行くことになり(その紹介した人が、受講のお膳立てをあらかたやってくれたらしい)、Toshiさん(知恵市場でライターもやってくれている)のクラスでクリシンを受け、そのあと僕のロジカルコミュニケーションを受講してくれたという経緯になるのですが、受講してみて「世の中にこんなに起業したいとか社長になりたいとかいう人がいるのかと、びっくりした!」というような、ちょっとのんびりしたタイプでした。それでも持ち前の知的能力と知的好奇心がうずいたらしく、数科目受講して経営学の理解もそれなりに獲得するというキャパの広さが、あるのも彼女らしいところです。

そんなわけで、僕が彼女と知り合ったころは、会社の仕事には満足度が高く、やめるつもりなどまったくなかったのでした。僕から見ると、知的能力の高さに対して、のんびりしていてもったいないなと思わないでもなかったのですが、それぞれのスタイルがあるのだから、彼女はそれでいいのだと思っていたのでした。実際のところ、このあとから、会社の上司が替わるなど、彼女の仕事環境も少しずつ変ってきていて、不満が募るというほどではなかったものの、漠然と「このまま同じように進んでいくことはできないかもしれない」ということに気がついてきたのです。そしてそれが、僕のライフデザインワークショップへの参加につながります。

こういった変化が、たぶん、今の時代としては、ゆっくりゆっくり彼女に訪れ、そのゆっくりした変化の中で、変らない「本を読むのが好き」という気持ちだけがクリアになっていきました。それは、砂浜にある小石が、波に洗われながらも、波が引くと周囲の平らな砂の上で、砂に埋まることなくすっくりと存在しているような感じかもしれません。周囲が変化する中で、本を読む時間が一番大切なんだと気がつき始める。そんな方向に、少しずつ動いていくのでした。

もちろん、彼女の生活が会社と本と、少しグロービス、という3つだけだったわけではありません。Toshiさんが「英語のシャワー」を始めたタイミングで受講し、その後、本が好きなのを活かして、他の受講生に「どんな(英語の)本を読んだらいい?」のおすすめ係になったり、読んだ本についてのブログを書くようになったり、自分自身の自立について少しずつ考えてみたりとする中で、やっぱり本が核にあるんだなということに気がついてきた。そんなプロセスが、この4?5年の間に起きてきたのだと思います。

あまりアクティブに動くタイプではないものの、引きこもるタイプでもない。いろいろなことに興味は持ち、やっては見るものの、やはり自分の核は本を読むこと。自分のStyleが明確になるにつれて、どんなことをすればいいかに目が向き始め、次のステップが用意されてきたのです。

さて、これから何かを始めたい、自分のライフデザインについて考えたいと思っているあなたは、こういうクヌギーの姿勢についてどんな印象を持つでしょうか。あなたのライフデザインは、あなただけのものであって、誰かのまねをしてもうまくいきません。時間をかけて自分の本質的な核(Favorite×Style)を見極めてください。その作業は、何かを追い求めるような「狩猟型」の時もあるでしょうが、むしろ静かに砂浜を見ているような「植物採集型」の時もあるのです。

さて来週は、彼女がこれからやろうとしていること、つまりFavoriteをThanksに変えていく流れについて、お話しします。

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